Introduction

圧倒的共感を呼んだ傑作小説が、
名監督&新世代豪華キャストにより待望の映画化!

詩的なタイトルが鮮烈な印象を残す、山内マリコが2012年に発表した処女小説が遂に映画化。2004年の高校時代から2013年までの時間軸の上で、みんなの憧れの的だった「椎名くん」を柱にキャラクターを交差させながら描く、痛く切ない群像劇が誕生した。

27歳の「私」は、何者かになりたくて東京に出たけれど、10年が経ち、なんとなく実家に戻った。高校時代に仲が良かったサツキちゃんと、当時みんなの憧れの的だった椎名に会いに行くことに。一方、地元に残った「あたし」は元カレの椎名のことが忘れられずに苦しんでいる。

「私」を橋本愛が、「あたし」を門脇麦が、二人を魅了した掴みどころのない椎名くんを進境著しい成田凌が演じる。そして、物語において吟遊詩人のような言葉を紡ぐ新保を演じるのは渡辺大知。岸井ゆきの、内田理央、柳ゆり菜ら注目の若手女優が廣木組に初参加するほか、『彼女の人生は間違いじゃない』の主演女優・瀧内公美、役者としても評価の高いマキタスポーツ、名バイプレイヤーの村上淳といった面々が脇を固めている。
メガホンをとったのは『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で感動の人間模様を描いた名手・廣木隆一。10代の恋愛ものを手がけることも多い近年において、群像劇のなかに女性の繊細な心理描写とたくましさを文学的に描写するという鮮やかな手腕が光る本作は、廣木監督にとって原点回帰であり新境地を切り開く意欲作となった。

主題歌とサウンドトラックは、登場人物世代を代表するバンド、フジファブリックが書き下ろした。劇中、意外な形で流れる彼らの初期の名曲「茜色の夕日」が、それぞれにやり場のない思いを抱える人々をエモーショナルに染め上げる。

「ここじゃない」「あなたじゃない」「それじゃない」――もどかしい想い、それでも羽ばたくことを夢見てやまない青春と、青春のその後をリアルに、そして瑞々しく描いた傑作が誕生した。

Story

2013

27歳の「私」(橋本愛)は、何者かになりたくて東京へ出たものの、10年が経ち、なんとなく地元に戻ってきた。実家に住みながらフリーライターとしてタウン誌などの仕事をしている「私」は、カメラマンの須賀(村上淳)と組むことが多い。40歳の須賀は東京への未練を頻繁に口にするが、東京から地元に戻った者同士で「私」とはウマが合う。この日は、ラーメン店の取材終わりに、高校時代に仲が良かったサツキ(柳ゆり菜)と合流し、なぜか須賀の車で当時みんなの憧れの的だった椎名(成田凌)に会いに行くことに。道中で懐かしいゲームセンターを見つけて立ち寄ると、たまたま帰省中だという同級生の新保(渡辺大知)と再会する。近況を話しているうちに、現在自動車教習所で教官として働く椎名に、新保がその仕事を紹介したことが発覚する。

2008

22歳の「あたし」(門脇麦)は書店でのアルバイトを終えて、駐車場で待っている同級生の遠藤(亀田侑樹)の車に乗り込む。「あたし」は高校時代に椎名と付き合っていたが、卒業後、椎名は大阪に引っ越して音信不通だ。「あたし」は椎名を忘れられないが、自分に好意を寄せる遠藤と何となく体の関係を続けている。

2010

24歳の南(岸井ゆきの)とあかね(内田理央)はファミレスでガールズトークを繰り広げる。抜群の美貌をもつあかねは10代の頃にアイドルとして活動し、中学を卒業すると東京に引っ越したが、仕事がなくなり、実家に戻ってきた。あかねは早く結婚したいと焦っているが、南は結婚に興味がないという。

2004

18歳の「私」は高校3年生。サツキは、地元も年齢も同じあかねが載っている雑誌を見て盛り上がっている。「あたし」は椎名と交際中だ。新保は同級生にからかわれているところを椎名に助けられ、初めて二人でハンバーガーを食べに行く。同級生のなっちゃん(片山友希)は、禿げ上がった47歳の男・皆川(マキタスポーツ)と(援助)交際中だが、お見合い結婚を理由に関係解消を告げられる。青春を謳歌する兄を醒めた眼で見ている椎名の妹・朝子(木崎絹子)は、東京の大学に通うために、家庭教師のまなみ先生(瀧内公美)の家で勉強を教えてもらっている。ある日の放課後、「私」とサツキは椎名から誘われて、奇跡のように楽しい放課後を過ごす。

2013

須賀から高校時代のことをあれこれ聞かれ、ゲームセンターに足を踏み入れ、そして母校を訪れたことで、「私」の脳裏にあの放課後が蘇る。記憶の中でキラキラと輝いていた椎名と教習所で再会した「私」は、ある衝撃的な言葉を告げられる。

相関図

Cast

「私」
橋本 愛
HASHIMOTO AI
1996年1月12日生まれ、熊本県出身。2010年中島哲也監督『告白』で存在感を放ち、注目される。吉田大八監督『桐島、部活やめるってよ』(12)などで第86回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞、第36回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。2013年、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」に出演し国民的人気を獲得した。近年の主な映画出演作に、『さよならドビュッシー』(13)、『渇き。』(14)、『リトル・フォレスト二部作』(14、15)、『ワンダフルワールドエンド』(15)、『残穢【ざんえ】─住んではいけない部屋─』(16)、『バースデーカード』(16)、『PARKSパークス』(17)、『美しい星』(17)などがある。また、今後の待機作には『オズランド』、2019年のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の出演を控えている。
「あたし」
門脇 麦
KADOWAKI MUGI
1992年8月10日生まれ、東京都出身。2011年にテレビドラマで女優デビュー。2013年の映画『スクールガール・コンプレックス~放送部篇~』で映画初主演し、NHK大河ドラマ「八重の桜」(13)、NHK連続テレビ小説「まれ」(15)、『愛の渦』『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』『闇金ウシジマくんPart2』(14)にて第88回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞などを受賞。単独初主演映画『二重生活』、『太陽』(共に16)、初挑戦のミュージカル「わたしは真悟」(16~17)など幅広く活躍、2018年エランドール賞新人賞を受賞している。近年の出演作に『こどもつかい』(17)、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17)、『サニー/32』(18)などがあり、待機作に『止められるか、俺たちを』『チワワちゃん』がある。
「椎名くん」
成田 凌
NARITA RYO
1993年11月22日生まれ、埼玉県出身。「MEN'SNON-NO」専属モデルとしてキャリアをスタートさせ連続ドラマ「FLASHBACK」(14)で俳優デビュー。その後TVドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(16)、「コード・ブルー --ドクターヘリ緊急救命-- 3rd season」(17)話題作へ出演し、映画にも多数出演。主な作品に『君の名は。』(声優、16)、『新宿スワンII』(17)、『キセキ -- あの日のソビト-- 』(17)などがある。2017年のNHK連続テレビ小説「わろてんか」に出演しお茶の間の人気を博した。その後も『ニワトリ☆スター』(18)、『ラブxドッグ』(18)をはじめ、2019年には岡崎京子原作『チワワちゃん』、『愛がなんだ』等が控えるいま最も注目と期待を集める若手俳優である。
「新保くん」
渡辺大知
WATANABE DAICHI
1990年 8月8日生まれ、兵庫県出身。ロックバンド・黒猫チェルシーのボーカル。2009年、田口トモロヲ監督の『色即ぜねれいしょん』で俳優デビュー。同作にて第33回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。以降、音楽活動に並行し数々のドラマ・映画にて俳優活動を展開。主な作品に、 NHK連続テレビ小説「まれ」(15)、『くちびるに歌を』(15)、『勝手にふるえてろ』(17)などがある。
「須賀さん」
村上 淳
MURAKAMI JYUN
1973年7月23日生まれ。90年代に人気モデルから俳優に転身し、数多くの映画・ドラマに出演。2000年には第22回ヨコハマ映画祭助演男優賞を受賞。近年の主な作品は、『新宿スワン』シリーズ(15、17)、『グラスホッパー』(15)など。18年出演作に『blank13』、『素敵なダイナマイトスキャンダル』、『友罪』、『パンク侍、斬られて候』などがある。
「サツキ」
柳ゆり菜
YANAGI YURINA
1994年4月19日生まれ、大阪府出身。2014年にデビュー、その年に公開した映画『うわこい』で初出演にして主演を務めた。同年のNHK連続テレビ小説「マッサン」にて往年の有名ポスターを再現したことが話題を呼ぶ。多くの映画・TVドラマに出演、主な作品に『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(17)などがある。ヒロインを演じた映画『純平、考え直せ』が9月22日に公開予定。
「山下南」
岸井ゆきの
KISHII YUKINO
1992年2月11日生まれ、神奈川県出身。2009年にデビュー後、映画、舞台などで活躍。主演映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』で第39回ヨコハマ映画祭最優秀新人俳優賞を受賞。 その他主な作品に『友だちのパパが好き』(15)、『ピンクとグレー』(16)、『森山中教習所』(16)など。今後も、NHK連続テレビ小説「まんぷく」、主演映画『愛がなんだ』などが控えている。
「森繁あかね」
内田理央
UCHIDA RIO
1991年9月27日生まれ、東京都出身。2010年4月に日本テレビ「アイドルの穴~日テレジェニックを探せ ! ~」でデビュー。同年6月に日テレジェニック2010に選ばれる。TV「仮面ライダードライブ」にて女優として活動を開始、近年ではTVドラマ「海月姫」(18)、「おっさんずラブ」(18)など話題作に出演。人気女性ファッション誌「MORE」のモデルなどマルチな活躍も注目を集めている。
「なっちゃん」
片山友希
KATAYAMA YUKI
1996年12月9日生まれ、京都府出身。TVドラマ、舞台、映画、CMと幅広く活躍。主な出演作にTVドラマ『セトウツミ』(17)、『リバーズ・エッジ』(18)、『いぬやしき』(18)などがある。公開待機作に『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!』(18)、『ねことじいちゃん』(19)がある。
「皆川光司」
マキタスポーツ
MAKITA SPORTS
1970年1月25日生まれ、山梨県出身。「作詞作曲ものまね」で注目を浴びる。2012年『苦役列車』でブルーリボン新人賞受賞。その後、役者業にも活動の幅を広げ、主な出演に『みんな!エスパーだよ!』(15)、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』(17)、『忍びの国』(17)などがある。
「まなみ先生」
瀧内公美
TAKIUCHI KUMI
1989年10月21日生まれ、富山県出身。2014年公開『グレイトフルデッド』にて本格的に映画デビュー。『彼女の人生は間違いじゃない』(17)では主演を務め、第27回日本映画プロフェッショナル大賞新人女優賞を受賞。主な出演作に『日本で一番悪い奴ら』(16)、『闇金ウシジマくん Part3』(16)、『夜、逃げる』(16)などがある。
「遠藤」
亀田侑樹
KAMEDA YU-KI
1991年3月8日生まれ。東京都出身。映画、ドラマ、CMなど幅広く活躍中。 AbemaTVオリジナルドラマ進出記念作品「#声だけ天使」岸田建造役で主演を務める。近年の出演作は、『斉木楠雄のΨ難』(17)、『心が叫びたがってるんだ。』(17)、 『いぬやしき』(18) 。 公開待機作に『恋するアンチヒーロー THE MOVIE』(18)、『凜』(19)などがある。
「椎名朝子」
木崎絹子
KISAKI KINUKO
2001年9月7日生まれ、長野県出身。高校2年生。今作が映画デビュー作となる。どこかミステリアスな雰囲気を持ち、劇中でも堂々たる存在感を放つ今後に期待の新人女優。

Director's interview

山内マリコさんの『アズミ・ハルコは行方不明』が映画化されて、先を越されたか感はありましたがデビュー作が気になっていたんで映画化は嬉しかったです。僕は基本的に、大きな事件が起こるわけでもない“普遍的な話”が好きなので、誰もが通り過ぎてきたことや、誰もが持っている“感覚”が描かれている作品なので。「椎名を巡るクラスメイトの話」という原作に沿った形になりました。「狭い地方都市で、時代や時空を超えるロードムービー」にすれば、映画的な見せ方ができるんじゃないかなと。富山市内で、過去の同級生に会いに行くだけなので、たいした移動距離ではありませんが(笑)。

 役者に対しては、「それぞれのキャラクターをぶれずにやってほしい」と思っていました。それぞれに独立している人間関係のなかで、地方にいそうだな、と思ってもらえるようになればいいなと。劇中で登場人物がフジファブリックの「茜色の夕日」を歌うのは、何より名曲ですし、あの時代を生きた彼らが共有している記憶でもあり、歌詞が彼らの気持ちを代弁しているような使い方をさせてもらいました。歌詞が物語やキャラクターにぴったりはまりすぎると世界が狭まってしまうので避けるようにしていますが、役者には「それぞれの役として歌って」と伝えました。

 ロケをした富山は、空の抜け方が非常にきれいでした。門脇麦が橋を歩いて渡る夜明け前のシーンは背景に山もあって、特にきれいに撮れたと思います。ただ、今回は富山に限定した物語ではなく、“ある地方都市”として見えたらいいなと思っていたので、地方都市ならどこにでもあるようなロケーションを選びました。富山にはもっと富山らしいいい風景がたくさんありましたが観光地とは違う視点の富山に出会えると思います。

 「高校の頃はよかったね」というような、ノスタルジーに浸る話にはしたくなかった。高校時代が輝いていたという話ではなく、このキャラクターたちが今、何を思っているのかが見えてきたらいいなと思いながら撮りました。そして、かつて高校生だったすべての人にとって、失恋だったり、喧嘩して負けたことだったりと、そういうひりひりするような思い出がぼんやり浮かんでくる映画だと思います。

監督:廣木隆一
HIROKI RYUICHI
1954年生まれ、福島県出身。1982年『性虐!女を暴く』で映画監督デビュー。1994年サンダンス・インスティテュートの奨学金を獲得して渡米。2003年の『ヴァイブレータ』では、第25回ヨコハマ映画祭を始め、国内外40以上の映画祭で監督賞ほか数々の賞を獲得する。主な作品に『余命一ヶ月の花嫁』(09)、『軽蔑』、『きいろいゾウ』(13)、『ストロボ・エッジ』、『さよなら歌舞伎町』(15)、『夏美のホタル』(16)、『PとJK』、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、『彼女の人生は間違いじゃない』(17)などがある。

Staff

照明:北岡孝文
KITAOKA TAKAFUMI
1963年生まれ。主な作品に、『映画 ビリギャル』(15/土井裕泰監督)、『オオカミ少女と黒王子』(16/廣木隆一監督)、『夏美のホタル』(16/廣木隆一監督)、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17/廣木隆一監督)、『伊藤くん A to E』(18/廣木隆一監督)等がある。
撮影:水口智之
MIZUGUCHI TOMOYUKI
1964年生まれ。主な作品に、『ドッペルゲンガー』(03/黒沢清監督)、『奇談』(05/小松隆志監督)、『オトシモノ』(06/古澤健監督)、『恋する日曜日 私。恋した』(07/廣木隆一監督)、『禅 ZEN』(09/高橋伴明監督)、『RIVER』(12/廣木隆一監督)、『スーパーローテーション』(15/斎藤久志)等がある。
録音:深田 晃
FUKADA AKIRA
1957年生まれ。主な作品に、『ストロボ・エッジ』(15/廣木隆一監督)、『夏美のホタル』(16/廣木隆一監督)、『PとJK』(17/廣木隆一監督)、『彼女の人生は間違いじゃない』(17/廣木隆一監督)、『伊藤くん A to E』(18/廣木隆一監督)、『増山超能力師事務所~激情版は恋の味~』(18/久万真路監督)等がある。
美術:丸尾知行
MARUO TOMOYUKI
1953年生まれ。主な作品に、『100回泣くこと』(13/廣木隆一監督)、『ルパン三世』(14/北村龍平監督)、『娚の一生』(14/廣木隆一監督)、『残穢 ー住んではいけない部屋ー』(15/中村義洋監督)、『オオカミ少女と黒王子』(16/廣木隆一監督)、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17/廣木隆一監督)、『愛しのアイリーン』(18/吉田恵輔監督)等がある。

Book

原作:山内マリコ
YAMAUCHI MARIKO
1980年生まれ。富山県出身。大阪芸術大学映像学科卒業。08年に短編「十六歳はセックスの齢」で第7回R-18文学賞・読者賞を受賞後、12年に『ここは退屈迎えに来て』(幻冬舎文庫)で鮮烈デビュー、各界から称賛を浴びた。主な著作に、『アズミ・ハルコは行方不明』、『さみしくなったら名前を呼んで』(ともに幻冬舎文庫)、『パリ行ったことないの』(集英社文庫)、『かわいい結婚』(講談社文庫)、『東京23話』(ポプラ文庫)、『あのこは貴族』(集英社)、『メガネと放蕩娘』(文藝春秋)、『選んだ孤独はよい孤独』(河出書房新社)など。
COMMENT
地方都市に生まれて、一生懸命ゴダールとか観てる自分ってなんなんだろうと煩悶し、不発だった青春を投影したのがこの小説です。刊行後、わたしと似た女の子が、実はたくさんいたんだと知りました。そしていま、生まれ育った富山の景色を背景に、橋本愛ちゃんや門脇麦さんが化身となって、スクリーンに現れようとしている。この映画が、日本中に偏在している、同じような境遇で生きる若い人たちに届くことを祈っています。

Production Notes

女性映画の名手が手がける群像劇

そのタイトルに惹かれて、山内マリコの『ここは退屈迎えに来て』を手にとったプロデューサーは、「自分自身の青春時代にも通じるところが多く、とても共感できました。十代後半から二十代後半の様々な女性が登場する原作であり、その世代の女性の想いを廣木隆一監督が描くことで、作品としての深みが出ると思いました」と映画化に動き出す。廣木監督は原作を気に入り、快諾。プロデューサーは脚本を、「男女関係の中に存在する痛さ、或いは包容さを描くのがうまい」劇作家、櫻井智也に依頼する。劇団MCRを主宰する櫻井にとって本作が初の映画脚本となる。原作は、ある地方都市を舞台にした、主人公の違う短編集。それを長編映画にするにあたり、高校時代は輝いていたが、現在は地元に残り自動車教習所で働く椎名くんに会いに行く「私」と、高校の頃に椎名くんとつきあっていた「あたし」を二本柱にした群像劇の脚本を作り上げた。

廣木監督だから実現したキャストのアンサンブル

2004年から2013年までを描く本作では、ほぼすべてのキャストがそのキャラクターの複数の年齢を演じ分けることと、地方都市における実在感を出せることが大前提だった。それらを踏まえ、高校時代と20代後半を演じられる女優、橋本愛が「私」に、門脇麦が「あたし」にキャスティングされた。椎名くん役には、キラキラした若手俳優のなかから、成田凌が選ばれた。その3人とのバランスで、渡辺大知、岸井ゆきの、内田理央、柳ゆり菜、マキタスポーツ、村上淳といった個性派や実力派の出演が決定。そして、遠藤役の亀田侑樹と、なっちゃん役の片山友希は、オーディションで廣木監督が選んだ若手俳優だ。また、同じくオーディションで発掘された新人・木崎絹子が、作品のラストを締める重要な役となる、椎名くんの妹・朝子役に抜擢された。

キャラクターを色付けるリアリティのある車選び

地方都市のロードムービーである本作は、登場人物のほとんどが車とともに登場し、その車がそれぞれのキャラクターを色付ける役割を果たしている。東京から戻ってきて間もない「私」はマイカーを持っておらず、地元に残る決意をしていない「あたし」は免許すら持っていない。カメラマンの須賀の愛車はフォードのブロンコ。白と緑に塗装した外車に、人と同じものは嫌だという価値観が表れている。仕事中に女子高生のなっちゃんと会っている皆川の車は、社用車のADバン。まなみ先生は、当時の女子大生に人気だった軽自動車のマーチ。あかねは、昔は軽自動車に乗っていたが、皆川と結婚後はメルセデス・ベンツに乗り換えている。椎名くんが「あたし」とのデートで乗るソアラは、父親の車を借りているという設定。新保くんは原付バイク。そして、椎名くんが働く教習所の教習車は、富山のスタンダードにのっとりピンクのセダン。とはいえ年々減ってきており、撮影用に貸し出してもらえるものをようやく見つけたときは、スタッフ一同で胸をなでおろした。

フジファブリック初の劇伴が映像を彩る

フジファブリックの初期の名曲「茜色の夕日」が劇中でドラマティックに使われているが、彼らの名前が初めて挙がったのは撮影準備中だった。彼らが07年にリリースした「若者のすべて」がこの脚本に非常に合うという意見がスタッフから上がったことがきっかけとなり、フジファブリックに劇伴を正式にオファーした。彼らはこれまで、映像作品に楽曲を提供することはあったが、劇伴を担当するのは今回が初となる。廣木監督は「物語や作品に寄り添わないでほしい」と伝え、彼らはエンディング曲「Water Lily Flower」の他、「コールスローブルース」「YOU&I」「Short Vacation feat.DJ Y」「純情商店街」などのボーカル曲と、3曲のインスト曲を書き下ろした。それ以外にも、ロックバンドのDATSが「Heart」を書き下ろし、『オオカミ少女と黒王子』にも参加し、今年5月にメジャーデビューを果たしたLUCKY TAPESが「Peace and Music」を提供している。

どこの地方にもありそうな風景を選びぬく

原作は富山が舞台だと名言はしていないが、原作者が富山出身であること、作品中に富山だと思われる風景が見受けられることから、本作を富山で撮影することに異論を挟む者はいなかった。富山県ロケーションオフィスが、原作に登場する場所を「ここだろう」と当たりをつけて、許可取りを進めていった。高校は、校舎の窓から校庭が見渡せて、校門から入ったときの校庭と校舎の構図が絵になる場所が選ばれた。南とあかねのエピソードは、富山県を含む3県で展開するファミレス「あっぷるぐりむ」で撮影を行った。また、車がたくさん登場するだけでなく、ストーリーのなかでは関わらない登場人物の車がさりげなくすれ違うシーンもあるため、廣木監督は道選びにはこだわったという。路面電車が走る総曲輪商店街は、監督のお気に入りの風景で、「私」とサツキちゃんの待ち合わせ場所に選ばれた。また、上京した朝子が「超楽しい!」と叫ぶラストシーンは、監督の意向で急遽屋上になった。ちなみに、朝子がまなみ先生の部屋で手にする写真集は、森山大道の「東京」である。

Music

フジファブリック
2000年、志村正彦を中心に結成。2009年、志村が急逝し、2011年夏より山内総一郎(Vo/Gt)、金澤ダイスケ(Key)、加藤慎一(Ba)の新体制で本格始動。
叙情性と普遍性と変態性が見事に一体化した、シーン屈指の個性派ロックバンド。
「銀河」、「茜色の夕日」、「若者のすべて」などの代表曲を送り出し、2010年にリリースしたアルバム『MUSIC』収録曲「夜明けのBEAT」が「モテキ」TVドラマ版(2010年)主題歌、映画版(2011年)オープニングテーマとして連続起用された。
更には「つり球」「宇宙兄弟」「銀の匙 Silver Spoon」「アオハライド」「マギ シンドバッドの冒険」と数多くのアニメ主題歌も担当。
シングル「カンヌの休日 Feat. 山田孝之」は俳優・山田孝之氏がボーカルで参加し、疾走感に溢れ力強い印象的なサウンドとインパクトのある歌詞が話題になった。来年2019年に結成15周年を迎え、同年10月には“フジファブリック 15th anniversary SPECIAL LIVE at 大阪城ホール2019「IN MY TOWN」”を開催する。
COMMENT
国道、ファミレス、ゲーセン。舞台は僕が生まれ過ごした場所ではないのに、スクリーンには知っているような故郷の風景が広がっていました。
一人一人の心の揺れや移り変わりと音楽をマッチングさせたいと思いましたし、フジファブリックとして様々な場面でこの作品に加われたことを誇りに思います。
劇場で観られる日が待ち遠しいです!
[フジファブリック・山内総一郎さん]
Water Lily Flower
words & music:山内総一郎

轟音はカーテンを揺らす 雲は空を隠してる
望遠で見ていた頃とは どこかが違ってたんだよ

輝きを待っていたんだよ ただそれに見とれたかった
何ならフェイクでも手にした 何かを置き去りにした
ああ 

寂しいと思ってたけれど 本当は孤独じゃなかった
体温が欲しかったんだよ 太陽を追っていたんだよ
花のように

咲いた鼓動がマーチを刻んでいる
幾重の願いは瞬いて消えてくから
離さないで 離さないで 離さないで

優しく揺さぶる 紛れもない 今

明けて七色のアーチを描いている
幾重の願いは瞬いて消えてくから
離さないで 離さないで 離さないで


暖かいコーヒーを飲もう さあもう進んでくんだろ 
昨日を追っているよりも 明日を待っているよりも

JASRAC 236-0602-9